ケミカルピーリングの歴史
ケミカルピーリングはどのように発展してきたのか、歴史をご紹介しています。
古代のケミカルピーリング
古代から、人々は熱心に美を崇拝し、肌の老化に対抗する療法を探し求めていました。
有史以前の人々が皮膚の老化、しみやしわをどのように治療していたか、当時の記録はほとんど残されていませんが、研磨剤(塩、軽石など)や動植物から抽出したオイル、薬草などを用いていたと想像されています。
医師が行った美容的処置に関する世界最古の記録は『エーベルスパピルス』で、紀元前1560年ごろのものと推定されています。
これにはしわの除去、髪の毛および眉の染色、そのほか身体を美化するためのさまざまな方法や手順が記されているそうです。
ケミカルピーリングは、有史以前からその効果が経験的に知られていました。
各国、各民族には、世代を越え受け継がれてきたさまざまな処方が残っています。
「安全」と「高い効果」を求めて古代エジプトの女性が好んで入浴したといわれる牛乳風呂ですが、牛乳にはAHAの一種である乳酸がたくさん含まれています。
乳酸が作用してなめらかな肌になるのです。彼女たちは理論からではなく経験上、牛乳風呂の効果を知っていたのでしょう。
そのほかマスタード、イオウ、石灰岩を含む湿布を用いられました。
顔面の皮膚をよみがえらせる方法は、いずれもなんらかの酸による処理を伴うものだったと考えられます。
ミネラルや植物に含まれるフルーツ酸などを直接皮膚に塗布して、酸の作用によつて古くなった角質を脱落させ、新しい皮膚の再生を促したのです。
ケミカルピーリングの誕生
ケミカルピーリングはどのように発達してきたのでしょうか。
治療を目的としたケミカルピーリングに医師たちが関心を寄せるようになったのは、20世紀初頭でした。
文献上ではすでに19世紀後半の1882年、ドイツの皮膚科医P・G・ウンナがサリチル酸(BHA)、レゾルシノール、フェノール、TCA(トリクロール酢酸)、それぞれの特性について記述しています。
20世紀に入ると、教則本や医療文献にケミカルピーリングに関する報告書がときどき散見されるようになります。
1903年、英国の皮膚科医、G・E・マッキーがフェノールを用いたケミカルピーリングによつてにきび痕の治療を開始し、1952年にその成果をF・カープとともに発表しました。
マッキーの同僚であるG・H・フォックスも、彼自身の教則本でフェノールを使用したソバカス治療について述べていますoフェノール治療の臨床例が飛躍的に増加したきつかけは、戦争でした。
第1次世界大戦中、フェノールは火薬による顔面のやけどの治療薬として使われています。
損傷部分をフェノールで治療した後、粘着テープで覆う治療法を開発したフランスの医師、ラグラッセ博士によると、同時に美容の面でも好ましい効果が得られたといいます。
ヨーロッパで開発されたフェノールによるピーリングを初めて米国に持ち込んだのは、ラグラッセ博士の娘、アントワネットであるといわれています。
彼女は1930年代から40年代にかけて、ロサンゼルス近郊でしわやにきび痕を改善するためのピーリングを施し、すばらしい成果を上げていましたo司――それ以降、彼女の弟子らによつて、ケミカルピーリングの技術は、米国でまたたくまに普及していきます。
しかしアントワネットをはじめケミカルピーリングを施した技師たちは、医師の資格を持つていませんでした。
医療行為を本業としないサロンで行われていたのです。
そのため、非専門的な療法と位置付けられ、多くの医師はあまり興味を示しませんでした。
1940年代後半から50年代はじめにかけて、まずメディアがこの療法に注目します。
メディァは「ついに″青春の泉〃が発見された」と報道し、サロンも大々的な宣伝を行いました。
当時、使用された薬剤はフェノールです。
こうして、全米各地のサロンでケミカルピーリングを受ける人が急増し、第1次ブームともいえる状況が訪れます。
最初、懐疑的だった米国の医学界も、その事態を無視できなくなりました。
しわやにきび痕といった肌のトラブルにケミカルピーリングがどのような効果があるのか、科学的な研究と評価が本格化します。
そんな時流とは関係なく、早い時期からサロンが行っていた療法と成果に着日し、研究の対象とした医師もいました。
ケミカルピーリングの第1次ブームが起きた後、1960年代になると、フェノールによるケミカルピーリングの方法がほぼ確立されます。
1961年、マイアミの形成外科医T・J・ベイカーは″化学的手段によるしわ「安全」と「高い効果」を求めての除去々と題する論文を発表し、自ら調合したフェノール溶波を紹介しました。
ドクター・ベイカーはフェノールの先駆者と呼ばれ、彼と協力者のゴートンが開発した調合フェノールは、今もそのまま用いられています。
フェノール以外の薬剤の研究も、次第に進んでいきました。
しかしフェノール酸は劇薬です。
効果が著しい代わりに、肌に傷痕を残してしまう可能性があります。
したがってケミカルピーリング先進国の米国でも、より安全かつ効果的なケミカルピーリング剤を目指して研究が続けられてきたのです。
人種の特徴として、比較的刺激に強い肌を持つ白人の間でも、フェノールを使用したケミカルピーリングによる事故は少なくありません。
また、米国社会は人種のルツボといわれます。
白人だけでなく、表皮の薄い有色人種にも施術できるケミカルピーリングのニーズが高まります。
1945年、モナツシュがTCA(トリクロール酢酸)を使用したピーリングの実験について発表。
翌年にはウルコフという医師が、BHA(サリチル酸)とレゾルシノールの混合物を用いたピーリングについて記述しています。
これが後のライトピールの原形になったといわれています。
時代が進んで1960年、カリフオルニアの皮膚科医エアーズは、TCAが紫外線ダメージを受けた皮膚にもたらす効果の研究を行いました。
米国におけるケミカルピーリングの発達は、フェノールによるピーリングが形成外科医によって促進され、皮膚科医がTCAを用いてより安全な治療を目指しました。
1970年代に入り、フェノールまたはTCAを用いたケミカルピーリングによって、肌のトラブルを改善する環境はかなり整ってきます。
1976年、レズニックとその協力者たちは、薬剤にTCAを使用したピーリング法を完成させました。
同じくTCAを使って、ドクター・オバジが独自に開発したのがブルーピールです。
現在、日本で行われているケミカルピーリングの主流、AHA(フルーツ酸など)の研究は最近になってから始まりました。
1970年代末期にV・スコットとュウがAHAの研究を開始し、1984年にやっと実験が実を結んでいます。
AHAがピーリング剤として広く認知されるようになったのは、1990年代を迎えてからのことです。
手軽なスキンケア感覚で受けられるAHAピーリングは、米国で第2次ブームを巻き起こしました。
そのブームが飛び火して、日本でもケミカルピーリングの時代が幕開けしたのです。
強酸のフェノールから中程度のTCAを経て、AHAやBHAなどの弱酸まで、今日ではさまざまなピーリング剤が存在します。
TCAとAHAを組み合わせたりして、より幅広いスキンタイプの治療が可能になりました。
ケミカルピーリングの日本での広がり
日本でも、健康な肌の再生を目的とした安全で効果的な治療法の確立は、皮膚科医だけではなく形成外科医、美容外科医にとつても長年の夢でした。
目指すは、これまで不可能と思われてた肌の老化を遅らせ、しみ、くすみ、小ジワ、たるみ、にきびなど、あらゆるスキントラブルに対応できるものです。
ケミカルピーリングは理想的な治療法といえますが、日本では、その研究が遅れていました。
ケミカルピーリングという治療法自体は以前から紹介されており、日本でも治療でどれくらいの効果があるかは知られていました。
しかし、白人の肌ではトラブルを起こしにくいフェノールですが、表皮の薄い日本人の肌には必ずトラブルを招きます。
白人よリメラノサイトの活性が高い日本人の場合、肌に強い刺激が加わるといっそう多くのメラニンが排出され、色素沈着を引き起こすからです。
また、表皮が薄いため、フェノールのような強酸を用いるとケロイド状になるなど、皮膚の再現性の面でも問題がありました。
いくら効果が絶大でも、肌質の違いからケミカルピーリングは日本人に適さない治療法と判断されました。
それ以来、ケミカルピーリング=フェノールという先入観が、日本の医療関係者の間に定着してしまったのです。
その後、AHAによる弱いケミカルピーリングが可能になり1994年日本で厚生省の認可が下りて、AHAが輸入可能になります。
1997頃から、報道をきっかけにケミカルピーリングが日本でも話題を呼び、女性の間で大きな関心を集めるようになったのです。
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